最初のひきこもり

軍資金が尽きギャンブルができなくなるとひきこもるというのが、ここ数年の常であった。



2011年11月、学生ローンの利用枠10万円を使い果たした。

10月分のクレジットカード・携帯料金・公共料金の支払いは滞納していたが、このままでは11月分も支払えない状況だった。一カ月以上も行っていない学校の方も何とかしなくてはならなかった。


しかしながら最後に負けて泣きながら帰った夜から、一歩も外に出られなかった。

どうしようもなく無気力になってしまったのだった。


友人から連絡が来ても全て無視した。しばらくすると実家からも着信が大量にあった。連絡が取れないことを心配した友人が実家に電話してくれていたのだった。また、大学からも出席状況の件で実家に連絡が行っていた。

なぜかは分からないが誰とも話したくなかった。


カーテンを閉め切り日中は寝ていた。普通の人が活動している時間帯に起きていること、日の光が嫌だった。いくらか貯えがあった米を調味料で味を変えながら食べた。行動範囲といえばベッド・ソファー・トイレの間だけであった。風呂にも入れなかった。

起きている間はノートパソコンでひたすらにアニメを観ていた。それまでアニメはまともに観てこなかったが、目が覚めている時間をやり過ごすのにアニメは有効だった。このときは「けいおん!」を何周もリピートした。現実逃避だった。



半月ほど過ぎたころ、父親が助けに来てくれた。

泣きながら事情を話すと、
「生きていてよかったよ」
とだけ父は言った。

気持ちを入れ替えてしっかり大学に通うと約束した。これは本心だった。


母や友人にも連絡をすると、みんな安心して慰めてくれた。誰一人怒る人はいなかった。

もろもろの未払い分を父に清算してもらい、二人で飲みに行った。


本当に生き返ったようだった。



翌日、父を札幌駅まで見送りに行った。当分の生活費として3万円をもらい、父と別れた。

改札からその姿が見えなくなると、私は父とは別の電車に乗り込んだ。



そしてパチンコ屋に向かっていた。

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